※2023年1月現在。民生向けFMチューナーとして(当社調べ)
FM放送を受信してステレオ音声として出力するには、正確な演算の繰り返しで復調する必要があります。これまでアナログで行われた復調行程をデジタルで行う初めての、そして唯一のFMチューナーが誕生しました。
まるで放送局にダイレクトに繋がったような鮮烈な音を体験してみませんか。
フルデジタル処理の利点
FPGAを用いたフルデジタル処理
高音質DAC、ES9038PROを採用
音楽のための電源、リザーブ電源を搭載
MGC思想に基づいた頑丈なシャシー
MPC(マルチパス・キャンセラー)を搭載
従来のFMチューナーの内部は非常に複雑です。その理由のほとんどは信号がレコード溝やテープの磁気信号のようにダイレクトな音声信号でないことに起因しています。チューナーの内部構成でフロントエンド、FM検波、MPXのいずれも、じつは信号を正確に取り出すための仕組みになっています。
実用化されたばかりの半導体ではその高周波に耐えられなかったため、初期の傑作チューナーの多くは真空管を用いていました。やがて日本で半導体技術が発達すると、チューナーは日本の独壇場になります。
それは他のオーディオコンポよりも「正確な信号を取り出す」という部分が、チューナーには大切だったからでしょう。日本がもっとも得意にしたことだったのです。
FMチューナーの需要が激減したため、開発は途絶えてしまいましたが、ここまでご覧いただいた通り、チューナーの内部では複雑な演算処理が繰り返されています。そのため、とくにチューナーの心臓部であるFM検波からMPXの部分がデジタル化されるのは当然の帰結なのです。
最新のFPGAをコンフィギュレーションすることで、同調周波数のままでの処理を可能としました。
従来のアナログチューナーでは高周波での処理が難しかったため、受信した信号を10.8MHzにビートダウンして復調処理が行われていました。しかし最新のシステムでは同調周波数のままでのデジタル処理が可能なのです。
C-FT1000/500では受信した信号を劣化させることなく放送波を正確に復調させる、理想的な処理を実現しました。
ESSのハイエンドDAC、ES9038PROを採用しました。高級SACDプレーヤーなどに採用される高音質DACで、最近はハイレゾ機器に多く用いられています。
この高性能DACに米軍MIL規格にも対応しているCRYSTEK社の超低位相ノイズのオシレーターCCHD-950で100MHz駆動させ、FPGAで処理された192kHz/24bitのハイレゾ・デジタル信号を高品位を保ったままアナログで出力します。(C-FT1000のみ)
1983年に誕生した伝説の銘機、NECのプリメインアンプA-10。このA-10の音を支えたのがリザーブ電源でした。音楽信号によって絶えず負荷が変動する電流に負けない電源部として開発された画期的な回路です。
このA-10シリーズのリザーブ電源を開発した萩原由久氏(元NEC)がC-FT1000用にリザーブ電源をカスタマイズ。通常のトランス電源と比べて3 分の1以下の変動電流に留め、極めて安定した電源をアナログ回路に供給しています。
ブランドバッチ、削り出しのフロントパネル、厚手の鋼板筐体から真鍮の3点脚まで、全てが国内製造。NECの銘機A-10に倣ったMGC(メカニカルグランドコンストラクション)の思想で設計された筐体は3点設置により不要な振動を確実に押さえ込み、高音質を担保しています。
ヘアラインが美しい5mm厚のフロントパネルはC-FT1000ではシャンパンゴールド色、C-FT500ではブラック色のアルマイト加工となっています。
ラジオの元祖はもちろんAM放送です。音声をダイレクトに放送波に乗せる振幅変調方式は受信機がシンプルで周波数も低いため遠くまで届くというメリットがあります。その反面送信設備は設置場所を選ぶ上に設備も大掛かり。何より雑音が多いというデメリットがありました。その問題を解決するために考えだされたのがFM(周波数変調方式)です。発明したのはエドウィン・ハワード・アームストロング。ラジオの性能を飛躍的にアップさせたスーパーヘテロダイン方式の発明者でもあります。
FM放送とチューナーの原理は後に説明しますが、端的に言うとノイズがそのまま音声信号として捉えられてしまうAMに対し、極端な話、放送波はあくまでデータであり、そこから音声信号に変換する仕組みを持つFMは、いわばアナログ的にAMに対し、そもそもデジタル的な原理を元にしているのです。このことはFMチューナーのフルデジタル化が理想形であるという根拠のひとつでもあります。
FM放送が「周波数変調方式」であることは何度か述べてきましたが、これは音声信号を基準となる周波数の上下約75kHzの幅で周波数が偏移する電波として送り出す方式です。
この電波に乗っている信号は、コンポジットのL+R音声に加え、L-Rという差分音声(データ)も送られてきます。
この電波を捉え音声信号として出力するのがFMチューナーです。一般的なチューナーの仕組みは以下のようなものです。
まず電波を捉えるのが「フロントエンド」という部分。電波の入り口です。ここで聴きたい放送局の周波数と同調させます。
次に「IFアンプ」で整えられた信号を「FM検波」というパートで周波数変調から振幅変調の信号に変換します。この部分はチューナーのキモでもあるので、初期のチューナーで使われたフォスター・シーレー検波、レシオ検波、クォードラチュア検波といったものから、日本のオーディオ全盛期にはPLL検波器やPTL(フェイズ・トラッキング・ループ)検波器、またトリオが開発したパルスカウント検波器など、様々な方式が生み出されてきました。
続いて検波で変換された振幅変調信号(コンポジット信号)からステレオ信号を取り出すMPX(マルチプレックス)に信号が送られます。この部分も当初はフィルターをかけてステレオ信号を作っていくマトリックス方式が使われていましたが、やがて国産チューナーではL+R信号とL-R信号に38kHzのスイッチング信号を加えてLチャンネルとRチャンネルを取り出すスイッチング方式が主流になると、いかに正確にスイッチング信号を作るかという開発競争に移り、中でもパイオニアはこのパートにPLLを用いたり、デジタル信号を使うDD(ダイレクトデコーダー)方式という独創的な方式を開発しました。そのほかそれぞれのパートの間にはリミッターやフィルターでノイズや外因により変化してしまった信号を元に戻すための仕組みも数多く組み込まれました。
ここまでのパートは信号を正確に取り出すための行程になります。ちなみに78から90MHz程度のFM信号が内部処理によって数MHzにビートダウン(周波数変換)されて処理されたとしても、わずか20KHz程度の音声信号しか扱わない他のコンポでは考えられないほどの高周波です。そのためチューナー内部には高周波ノイズに対する対策が筐体内部の隅々まで施されていました。
こうして生成された正確な信号から、内部で発生するノイズと戦いながら、「美しい」音楽信号として出力するために各メーカーが培ったオーディオ技術を駆使していたことは言うまでもありません。
しかし、こうした苦労の多くは、アナログで数多くの複雑な処理を行うことに起因していました。当時の開発者たちも、もしデジタル技術が進化していたら、きっとこのフルデジタル処理に行き着いていたことでしょう。
C-FT1000のDACを簡略化したモデル。お手持ちのDACをご使用になる場合はC-FT500がおすすめです。デジタル出力は同軸出力、光出力に加えAES/EBU出力も備えています。
フロントエンドからデジタル出力まではC-FT1000と同等の性能を持っています。
MPC(マルチパス・キャンセラー)も搭載しています。
全高調波歪率(85dBf入力、1kHz):0.01%(MONO)、0.02%(STEREO)
SN比(85dBf入力、A補正):90dB(MONO)、85dB(STEREO)
ステレオ分離度 :85dB(1kHz)、75dB(10~15kHz)
周波数特性:10~15kHz(+0.1dB、-0.5dB)
出力レベル(100%変調、MONO):0.95V
受信周波数範囲 :76.0~95.0MHz(0.1MHzステップ)
アンテナインピーダンス:75Ω不平衡(F型コネクタ)
FM検波方式:デジタル検波方式
ステレオ復調方式:デジタル復調方式
デジタル音声出力:同軸×1系統(48~192kHz)、光(TOSLINK)×1系統(48~96kHz)
アナログ音声出力:バランス(XLR、100Ω)×1系統、アンバランス(RCA、50Ω)×1系統
電源:AC100V(50/60Hz)
消費電力:15W
外形寸法:W430×H80×D320mm
重量:7.8kg
全高調波歪率(85dBf入力、1kHz):0.01%(MONO)、0.02%(STEREO)
SN比(85dBf入力、A補正):90dB(MONO)、85dB(STEREO)
ステレオ分離度 :85dB(1kHz)、75dB(10~15kHz)
周波数特性:10~15kHz(+0.1dB、-0.5dB)
出力レベル(100%変調、MONO):0.95V
受信周波数範囲 :76.0~95.0MHz(0.1MHzステップ)
アンテナインピーダンス:75Ω不平衡(F型コネクタ)
FM検波方式:デジタル検波方式
ステレオ復調方式:デジタル復調方式
デジタル音声出力:同軸×1系統(48~192kHz)、光(TOSLINK)×1系統(48~96kHz)、
         AES/EBU×1系統(48~192kHz)
アナログ音声出力:アンバランス(RCA、50Ω)×1系統
電源:AC100V(50/60Hz)
消費電力:14W
外形寸法:W430×H80×D320mm
重量:7.5kg
フルデジタル処理の最大の恩恵は信号を劣化させることなく、復調させることを可能にしたことですが、その副産物として演算によるマルチパスの検出・除去を可能にしました。
すべての信号をデジタル化しているため、マルチパスによる位相のズレを見つけ、取り除くことが可能になったのです。これにより極めて歪みの少ない音を楽しむことができます。
C-FT1000/500は林輝彦氏が考案した、アンテナからのRF信号を直接A-D変換し、デジタル信号処理を行うことで音声を復調する方式(=RFダイレクトサンプリング方式)のチューナーです。これまでのFMチューナーと比べると、S/N比、ステレオ分離度、歪率など全ての指標において最高の受信性能を有します。